野猪大改造-第08集.doc
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『悪夢のデート』 「髪も切って、結構可愛くなったと思うんだけどな。 何で野ブタ。の周りだけ、どんよりしてるんだ? こいつには、何かが足りねーんだよな。 野ブタ。に足りないものね・・・。 こ、これだ!これだよ。 野ブタ。に足りねーものは、この、男に媚びるような声だ! おぉ、男に可愛く見せようと、クネっと体をひねって見せる技。 これだよ!男を引き寄せるテクニック! そっかそっか。 野ブタ。に足りねーのは、男とのコミュニケーションだ! つまり恋の経験だ。」 ある朝、野ブタ。の下駄箱にラブレターが届く。 差し出し主はシッタカこと植木誠(若葉竜也)だ。 草野彰(山下智久)は学校へ行く時間を過ぎても家でゴロゴロ。 下宿先の平山一平(高橋克実)に、 「靴履くのが面倒くさいんだもん。 なんか、すべてがDOでもいい感じ。」と言う。 「恋でもしたか? あれだろ?前は一人でも平気だったけど、 今はやたら一人が寂しくてたまらない。 でもって、雑誌やCDをやたら買い込んで、 夜、一人時間を潰すんだけど、 でもやっぱり寂しくてたまらない! それが、恋よ。 こんなところでボヤボヤしててもいいのか? 今頃ライバルが、今日こそ告白してやろうって思ってるかもよ。」 平山の言葉に、彰は慌てて学校へと走り出す。 屋上にいる信子(堀北真希)と修二(亀梨和也)の2ショット写真をデジカメで 撮影し、微笑む謎の少女。 笑ったときに、口元にほくろがありました。 「俺思ったんだけど、信子に決定的に足りない所って、 キャピキャピ感だと思うんだよね。 弾けてないってーの? だからさ、恋愛しよう!」 「恋愛って!」慌てる彰。 「お前、恋愛いいぞ。肌つるつるになるらしいぞ。」修二が構わず続ける。 「ツルツルじゃん!充分じゃん! 目~悪いんじゃん、修二ちゃん!」 信子はそこで、二人にラブレターを見せる。 「私・・・無理だと思う。」修二のジャケットの裾をひっぱりそう言う信子。 「大丈夫だって。任せとけって。 恋愛してこそ高校生だ!」 「そうだよ。 明るく正しい男女交際、やってやろうじゃねーの!」 「ちょっとだけね。ちょっとだけ、いいかな、とか、思ったわけよ。」 シッタカが修二に打ち明ける。 「俺もね!俺もね!ぶっちゃけ、小谷、ちょっといいかもって思ってた!」 「うそ!?お前もそう思った?思ったか。」 「あいつ絶対時間が経つと人気出てくるから、今のうちに抑えておかなきゃ。」 修二は、ダブルデートをしようとシッタカを誘う。 お昼休み。 理科室でお弁当を広げるまり子と修二。 修二はまり子の指に入ったトゲを取りながら、ダブルデートに誘う。 「でも本当かなぁ。」 「何言ってんの?本当だって言ってんの。」 「だっていつもさぁ、約束しても修二ドタキャンなんだから。」 まり子は少し不安そう。 「修二ってこういうの上手いよね。」 「だから俺に任せとけって言ってんの。」 「うん!」 ダブルデートの件を信子に伝える修二。 「別にそういう、大げさなものじゃなくってさ。 俺も一緒に行くし、大丈夫!な。」 「でも・・・私、デートなんて、したことないし。」 「じゃあ尚更だよ。 だって、このまま誰とも付き合わずにさ、一生、一人で寂しい人生 送るつもり?」 修二に視線を合わせる信子。修二が「どうするの?」と目で聞いている。 信子はその場から逃げるように立ち去った。 廊下でシッタカとバッタリ会った信子は、つい、逃げ出してしまう。 「修二、俺やっぱ嫌われてるみたい!」とシッタカ。 「え?どうしたの?」 「行っちゃった。」 「違うよ。 それは彼女なりの、お前に対しての好きっていう表現だと思うよ。」 二人の会話はクラスの友達に聞かれ、あっという間に噂が広まる。 「シッタカ、お前、趣味悪すぎ。」バンドーたちがからかった。 「人を好きになるって言うのは!!」つい大声になる修二。 クラスがしんと静まり返り、急に弱気になる。 「・・・美しいこ・・と・・・じゃん。」 クラスの生徒たちは修二の意見に同調する。 彰は修二たちを黙って見つめていた。 学校の帰り道、修二はダブルデートを進め、彰は反対する。 「な、行くよな?」修二が信子の顔を覗き込む。 信子の目に映る、修二の笑顔。 信子は小さく頷いた。 「よっしゃ!野ブタ。、頑張るぞ!な!」修二が信子の肩に手を置く。 その手を振り解き、「嫌だ!スケベ!」と彰。 3人を見つめる瞳。その様子を写真に収めて立ち去る。(左目のアップ) フラッシュに気付く3人。 そのとき、妙な泣き声が聞こえてくる。 「この笑い声聞くと、不吉なことが起こるのよー。 デート、上手くいかないかもね!」と彰が言った。 この商店街のシーン。 ランニングシャツにエプロン姿でペットボトルを両手に持つおじさんと、 女性の二人連れ(一人がしゃがみ込んでる)の演技がとても気になった! 学校の教師達も、その鳴き声に噂する。 「またこの声か!」と校長。 「また何か悪いことが起きるんですかねー。」とセバスチャン。 「この声聞くと悪いことが起きるんですか!?」と黒木。 「まぁ噂ですけどね。」 「去年の西の警察沙汰、確か、この声の直後だったよね。」 「あれはこじれましたね。」 「うちのクラスじゃありませんように・・・。」思わず祈る横山だった。 「この声、教頭先生の笑い声に似ていません?」 「私も、そう思ったんですよ!」 ダブルデートを前に、信子を特訓する修二。 「知らなかったー! シッタカ君って、頭いいんだね!ヘヘ。 ・・・みたいな感じでさ、相手をおだてることが大事だから、ね。 あとさ、お前すぐ逃げ出すの禁止ね。 あともしさ、あいつがなんか、お前を触ってこようとしたら、 やんわり、断れ。やんわり。 今からそこ教えるから。いい? こういう風にもしあいつが」 「ちょっと待ったー! そっからは俺がやるから。」彰が手を挙げる。 「別にいいよ。」 修二に代わって彰が信子の隣に座る。 「シッタカが、野ブタ。を、抱く。」指示を出す修二。 「抱くって・・・。スケベ!」 「は!?」 「肩組むとか、そういう、言い方、あるじゃない。」 「どっちだっていいんだよ。 じゃ、シッタカが、野ブタ。の、肩組む!」 「・・・・・あ!動かない!手が。」 「何やってんの!もういい、チェンジチェンジチェンジ!」 修二が再び信子の隣に座る。 「こうやって、シッタカが、お前に、こうやってな、」 「修二と俺でやろう!」 「何で?」 「その方が、客観的に見えて、わかりやすいのよー。」 「そっか。そうだな。 じゃ、どっち役?」 「修二が野ブタ。で、俺がシッタカ。」 「俺が、野ブタ。ね。わかった。」 二人が並んで座る。 「俺、お前のことが好き!」修二を抱きしめる彰。 「ダメ。ダメなの。ダメ。」 「あの、心臓が、バクバクいうぐらい、好きだっちゃ。」 「わかんない!」クネっと体をひねって見せる技を使う修二。信子がマネをする。 「もう、こんぐらい好き!」両手を大きく広げる彰。 「私も好き!」手を組んで可愛く答える修二。 唇を突き出す二人。 そこにやって来た横山、二人の様子に驚いて持っていた紙袋を落とす。 修二と彰もびっくり! 「いや、違うんです!」 「大丈夫、俺、口固いから。」と言い立ち去った。 頭を抱える修二! 恋する彰のリアクションも、修二の女の子役も可愛かった! 修二はまり子と打ち合わせ。 「今回はさ、小谷とシッタカをくっつけるワケじゃん。 そこに、まり子がいると、小谷のダメな部分がさ、 目立っちゃうんじゃないかなって。」 ビンの蓋を開けようとしながら修二が言う。 「貸して。」ビンを受け取るまり子。 「じゃあさ、私、めちゃくちゃ悪い女やってあげる。 小谷さんの引き立て役やるから、任せて。」 「引き立て役?まり子が? 無理無理無理!絶対無理!」 修二が空けられなかったビンの蓋を開けたまり子。 「任せて!」 「あ、じゃあさ、デートを成功させるポイントとか教えてよ。」 「ポイント?それは最後に、今日は楽しかったっていう言葉だと思うよ。」 「そうだ。それがまた次会いたい!っていうことにつながるんだもんな。」 「でも、小谷さんが心から言わなきゃダメだと思う。」 「偉い!そうだよ。心から言わなきゃ。心だよ。それ、ポイント高いな。」 意外と握力のあるまり子です。 デート当日。 修二はまり子とシッタカの分のお弁当を作り、信子に渡す。 「で、俺はどうしたらいいわけ?」彰が聞く。 「家にいればいいじゃん。テレビ見てればいいじゃん。」 「お前がデートで、俺だけ家か。」 「だってお前が来ると、まとまるものもまとまらなくなるし。 絶対来んなよ、お前。」 彰を残し、二人は出かけていく。 修二と信子はデートの練習をしながら待ち合わせ場所へと向う。 その後をつける彰。手をつなぐ二人にジェラシー! 修二は信子よりも先に待ち合わせ場所に向かい、信子に「よう、小谷!」と 声をかける。 まり子も「今日はよろしくね!」と声をかけた。 「今日は・・・楽しかったです。」 信子の間違えを、「・・・と思えるような一日にしたいです。」と 修二は慌ててフォローした。 まず、4人はショッピング。 悪女ぶりを演出するまり子は、買い物三昧。 買ったものすべてを修二に持たせる。 修二はまり子と手をつなぎ、後ろを歩く信子とシッタカにアピール。 信子は少しずつ手を伸ばし、シッタカの袖口を掴む。 二人を見張る彰、ショーック! 手をつながれた時のまり子の表情!初めてなんでしょうか。 彰がゲームセンターで張っていると、なぜかそこへゴーヨク堂の店主が カートに本を乗せ移動販売。 「シトシトピッチャンシトピッチャン♪ おぬし、素敵な昆虫図鑑はいかが?」 「1億!?」 彰はその本を手に、再び尾行開始! さすが、社長のご子息! この虫図鑑、昆虫マニアのクラスメートが欲しがるだろうなー。 今後また登場する!? 公園につくと、4人がお弁当を広げていた。 信子の弁当(修二が作ったもの)を広げ、可愛いと感激するシッタカ。 まり子が持ってきたお弁当は焦げた玉子焼きのほか、見た目、どこか不味そう。 「うそぉ!」思わず修二もそう叫ぶ。 「美味しそうでしょ?」とまり子。 「お前、いつもこんなの食べてんの?」とシッタカも驚く。 「そうだよ!今日、豪華!」 「修二、お茶は? コンビニのじゃなくちゃ嫌だ。買ってきてよ。 温かいやつじゃないと嫌よ。」 わがままぶりを見せ付けるまり子。 「上原ってあんな性格なの?」シッタカがこっそり修二に聞く。 「う・・・うん。」 お茶を買いに行く修二に、まり子はVサインを送った。 悪女っぷりを熱演するまり子、いい子です! お茶を買って戻る途中、彰を発見する修二。 「奇遇なのぉ。」とごまかす彰に 「絶対邪魔すんじゃねーぞ!」と修二は念を押す。 「あんなにくっついてる!」気が気じゃない彰。 「これで絶対成功確率、99.99999999%だ!」と修二。 邪魔するなよ、と彰に言い、修二は3人の元へ戻っていく。 修二とまり子は行くところがあると言い、信子とシッタカを二人きりにする。 信子の心細そうな様子に気付く修二。 「修二ってさ、小谷さんのお父さんみたいだね。」 腕を組んで歩く二人の後姿を、信子は寂しそうに見つめていた。 修二たちが帰ったあとも、彰は信子を見守っていた。 シッタカが飲み物を買いに行った隙に、 「の・・・野ブタ。パワー、注入!」と信子。 「ばっかだなぁ。お前は今、デートの、最中!」 彰は同じ振りで言ったあと、微笑む。 駅のホーム。 「大丈夫かな、あの二人。」まり子が言う。 「大丈夫だよ!だって、まり子の悪人ぶりすごかったし!」と修二。 まり子は笑ったあと、 「今日は楽しかったです!」 「・・・おぅ。」 「心こもってなかったかな。」まり子が呟くのを修二は黙って聞いていた。 修二の心、揺れていましたね。 まり子の気持ちに明確に答えることを避けてしまいました。 まり子に対して真剣になろうとしているのか、 それともいい加減な自分の態度を反省し始めているのか・・・。 シッタカと信子は水族館へ向った。 「可愛い・・・。」二人は楽しそうに見て回る。 彰は相変わらず二人を尾行していた。 エスカレーターに並んだ二人。シッタカが信子と手をつなぐ。 「アキラ、ショーック!」後ろにいた明が呟く。 「映画のキャリーの最後がね、キングは気に入らなかったらしいんだよね。 でも、その作品で彼は人気が出たっていうか。 デバルマって結構怖いんだよ。最後見たら絶対びっくりする!」 シッタカの話を頷いて聞く信子。 シッタカは映画好きなのかな。 てっきり、『池袋ウエストゲートパーク』のキングかと思ったら、 原作者のスティーヴン・キングですよね。 二人の側で絵を描いていた老人が突然倒れる。 信子は駆け寄り、「大丈夫ですか?」と声をかける。 「どうしよう。」シッタカを見る信子。シッタカは戸惑うばかり。 「おじいさん、大丈夫ですか?とりあえず、救急車!」 信子の言葉に、シッタカが動けずにいると、 「俺が呼ぶのよぉ。」彰が駆けつける。 信子は老人に呼びかけながら、嘔吐物を手で拭う。 「私のカバン、取って。」信子がシッタカに言う。 シッタカはカバンを渡す時、信子の手に触れ 「汚ね!」と言い、飛びのける。 悲しそうな信子の目・・・。 「違う!違う、そうじゃなくて、そのおじさん触った手だから。」 必死に弁解するシッタカ。 信子は悲しみでいっぱいの目でシッタカを見つめ、そして倒れた老人に 視線を戻した。 救急車に乗り老人に付き添う彰と信子。 落ち込む信子の手を取り自分の頬に当て、 「全然汚くないだっちゃ。」 そして信子の手を見つめ、 「ほら見て。とっても優しい手じゃないか。 なぁおじいちゃん。」 彰はそう言った。 彰君の優しい言葉にウルウル。 これで傷ついた信子の心が癒えるといいのですが。 その頃、水族館に残ったシッタカは座り込んだまま、 自己嫌悪に陥っていた。 病院の待合室で待っている間、信子は彰に言う。 「一生懸命、やってくれたのに、ごめん。」 「デートのことか?」 信子が頷く。 「私のために、上原さんまで、がんばってくれたのに。」 「野ブタ。のせいじゃないじゃんか。」 「でも、私がもっと、上手くやれれば。」 拳をぎゅっと握り締めて信子が言う。 「期待に、こたえたかった。 上手くいって、み、みんなに、ありがとうって、言いたかった。」 看護士が二人に、あの老人は酒の飲みすぎで倒れたが、もう大丈夫だと 伝えにくる。 二人はほっとし、病院を後にする。 「空、きれいだね。」 「うん。キャッチボール、したいような、空。 したことないけど。」 二人は抜けるような青空を見つめた。 「私はいつも、二人にボールを投げてもらってばかりなんだよね。 でも、受けるのが精一杯。 だからいつかそのポールを投げ返したいと思ってる。 二人のグローブに、ポンっと、届くように投げ返せたら、 気持ちいだろうな。」 この、信子の語りとともに流れた映像は二人のキャッチボールするシーン。 これは想像?それとも現実? ボールを投げる=行動を起こす。 信子はいつか、自分から二人の為に何かしたい、と思っているんでしょう。 修二は家に戻ると、母・伸子(深浦加奈子)の靴! 父・悟(宇梶剛士)が「出張から帰ったらバタン・キューよ。」と 布団で横になる伸子を指差す。 寝言でオクラ!と叫ぶ母の為に買い物から戻った弟・浩二(中島裕翔)。 伸子が「ブロッコリ!」と叫んだため、また買い物に行かされる。 その日、しゃぶしゃぶの予定だったが 「母さん起きないから無期限延期!」と悟が言う。 お、お母さん生きてたー!!良かった良かった! 奥さんをとても愛している悟ですね。 自分の部屋でベッドに横になった彰は自分の手を見つめ、頬に触れ、 信子の手を取り頬に当てたことを思い出す。 「手!俺、すげー大胆じゃん! どうしよう、どうしよう!野ブタ。! もう野ブタ。の顔見れねーよ!どうしよう!恥ずかしい!」と大パニック! 「若者は一人、悶々としているわけだ。」 平山は下で一人酒を飲みながらそう言った。 翌日、学校の屋上から大量のビラが撒かれる。 『驚くべき小谷信子の男関係 今度の餌食は2B植木君』 信子がシッタカの腕をそっとつまむ写真が載せられていた。 そのビラは、学校中に張り巡らされてあった。 「こういうの嫌いなのー。」一枚一枚剥がしていく彰。 別の場所で信子も黙ってそれを剥がしていた。 =美術室= 「シッタカはさ、こんなビラが出回っても、お前と付き合いたいって 言ってんだ。 実際付き合っちゃえばさ、みんな、こんな噂すぐ忘れるし。 だから、あいつと、仲直りしてさ。」修二が言う。 「でもシッタカは、野ブタ。のこと、キッタネーって言ったんだぜ。」と彰。 「いやだから、それは、あいつも反省してんだ。反省してんの。 だからさ、あいつのこと、許してやって、ほしいんだよね。 まだ怒ってんの?」 「やっぱり、好きでもない、人と付き合うのは、よくないと、思う。」 「何言ってんの?だってそんなの、みんなやってることだしさ。 人とこう、上手くやっていこうと思ったら、いろんな経験とか必要だし。 だってお前、人気者になりたいんでしょ? だって、人気者になりたくて、がんばってるんじゃないの? 違う?」と修二。 少しの間の後、信子は顔を上げて言う。「別に・・・。」 「別に!?だって、俺たちそのためにがんばってんじゃないの?違うの? じゃあさ、人気者に、なりたくないの?」 修二の顔を見つめ、信子が頷く。 「はぁ!?は?何それ。 じゃ、俺一人でバカみたいじゃん。なぁ。 意味わかんねーんだけど。 お前、こんなビラが出回ってんだぞ。 お前なんてすぐ誰にも相手にされなくなるよ、ねぇ。」 「それはお前はそのビラ信じてるってことか?」彰が言う。 「別に信じてるとか信じてねぇとかじゃなくて。 そりゃ信じてねーけど、こんなのさ、あちこちベタベタ貼ってあるんだぞ。 みんながそういう風に思うのは時間の問題じゃんか。」 「ビラが出回って、野ブタ。の価値が下がるから、 今のうちに叩き売れって、俺にはそういう風に聞こえるんけんど。 野ブタ。は野ブタ。じゃん。 ビラ出回ったって、ここにいるのは俺らの知ってる野ブタ。だし、 何も変わってないじゃんか。」 彰の言葉に修二は黙り込む。 外からはあの変な鳴き声。 修二はビラを投げつけ部屋を出て行く。 信子がダブルデートを了解したのには、彰と修二の期待に答え ありがとうと言いたかったから。 そして信子は、自分を少し変えたかっただけ。 修二は、信子を人気者へとプロデュースしたかった。 この辺のすれ違いで衝突してしまいました。 「好きでもない、人と付き合うのは、よくないと、思う。」 これは自分自身に、そして修二への忠告の意味もあったのかもしれません。 修二は、教室の手前でクラスのみんなの会話に聞き入る。 「このビラ怖くねー?」 「女子トイレにも貼ってあったよ。」 「男子トイレにも。」 「学校中だね。」 シッタカは教室の隅でポツンと一人考え込んでいる。 「でもさ、小谷も小谷だけど、上原まり子も相当感じ悪いらしいよ。」 「料理とかも下手なんだって。」 「なんだ。自分で上手いって言ってるだけなんだー。」 「ねぇ上原先輩の噂聞いた? あの先輩自分でお弁当作ってないんだって!」 「マジで?詐欺じゃん!」 噂がどんどん広まっていく。 修二はバスケ練習中のまり子を訪ねていく。 「昨日のデートのせいでさ、まり子にまで変な噂流れちゃってるからさ。」 「ああ。いいんじゃない?別に。」 「え・・・本当のことじゃないじゃん。」 「本当のことは、修二が知っているからそれでいいの。」 「え・・・でもさ。」 「だからいいんだって。 誰か一人だけ、本当のこと知っててくれれば、それで充分! 本当のことは修二が知っているからそれでいいの。」 まり子を見つめる修二。 練習に戻ったまり子を、修二はしばらく見つめていた。 帰り道、修二が自転車を漕いでいると、また、あの鳴き声。 キャサリン(夏木マリ)が木の上から回転ジャンプして着地する。 「何してんすか!?」 「アハハハハって鳴く鳥、捕まえたー!」 手には鳥かご。中には九官鳥がいた。 「うわ!九官鳥!」 「そう。どこかに飼われてたのが、逃げたんじゃないの?」 けたたましい鳴き声を披露する九官鳥。 「私の声に似てるとか言われてさ、いい迷惑だよー。」 「鳥だったんだ・・・。」 「何なに?冷静沈着な桐谷修二も、噂ごときに惑わされたか! あ、こういうのにも、惑わされたりしてる?」 手に持っていたビラを見せ、キャサリンが続ける。 「桐谷、恐れるな。 これはただの紙切れだ。どこにでもある、ただの紙切れ! アッハッハッハッハ!」 鳥と一緒に豪快に笑いながら、キャサリンはその場を後にした。 鳥かご、あんなに叩いちゃ可哀想! 九官鳥、本当に怯えていましたよー!! 自転車を走らせる修二。 父親が空を見上げている姿に気づき声をかける。 「何してるいの?」 「母さんまた仕事行っちゃってさ。」 「で、父さんは、何してるの?」 「母さん乗せた飛行機が、もうすぐここ通るからさ。」 「こんなに会えないでさ、結婚した意味とかあるの?」 「バカだなぁ。なかなか会えないから結婚したんじゃないか。 結婚さえしてれば、年に何回かでも会えるだろ?」 「マジ!?」 「マジマジ、大マジだよ。 俺のカッコいいところとか、情けないところとか、くだらないところとか、 全部知ってくれている人がさ、世の中のどこかにいると思うだけで、 俺はいいの。それで充分なの。」 「ふーん。・・・あ、あれかな?」飛行機を見上げる二人。 「あれあれ! のーーぶたーーーん!」 「野ブタ。?」 「昔そう呼んでたの。のーーぶたーーーん!」 「やっぱり、好きでも、ない人と付き合うのは、よくないと思う。」 修二は、信子の言葉を思い出し、また考えた。 二人の名前が同じなのは、そういうことでしたか。(笑) 確か、野ブタ。というあだ名を考えたのも修二でしたよね。 父と母の、強く深く結ばれた愛に、息子は何を思う!? 「しゅーーじくん!」 自転車を走らす修二を呼び止める彰。 「なんだよ。何?」 彰は修二を連れて、信子のあとを追う。 「野ブタ。のあと、つけてんのよーん。」 「何で!?」 信子が犬と向き合い笑顔の練習。 「ここで、トラキチ相手に笑顔の練習するんだっちゃ。」彰が修二に言う。 神社に向う信子。 「で、ここで必ず頭を下げて、」彰が説明する。 「買いもしないのに野菜眺めて、」と彰。 「か、可愛いですね。」花屋の店員に話しかける信子。 「あんただって可愛いわよ。」店員が答える。 「花屋のおばさんと話して。」と彰。 暗くなった公園、信子はビラを契り鼻歌を歌いながら花を作る。 「俺たちさ、野ブタ。のこと何も知らないよね。 ていうか、知ろうとも思ってなかったっしょ。 野ブタ。の願い、知ってる? いつか人気者になって、お前に、ありがとう!って言うことなんだっちゃ。」 「野ブター! 修二君が、お前に話があるってよ。」 彰の言葉に信子は驚いて振り返る。 彰の言葉に、修二はビラをくしゃくしゃに丸め、信子に言う。 「俺やっぱさ、俺がお前を人気者にしたい。」 くしゃくしゃに丸めたビラを信子に投げる修二。 それを受け止める信子。 信子は、修二が投げたビラを見つめ微笑んだ。 修二と彰も、そんな信子の様子に微笑んだ。 「そして、普通の女の子みたいに、くだらねー事で、 おなかの皮がよじれるぐらい、涙流して笑うところを、 見てみてーんだよ。」 信子が修二にビラを投げ返し、修二がまたそれを投げた。 「ビラは言うとおり、ただの紙切れになった。 デートは、予想外の展開を見せた。」 蒼井かすみが信子の席にやってくる。 「小谷さん。小谷さんが助けてくれたの、うちのおじいちゃんなんだ。」 「あ・・・そうなんだ・・・。」 「ありがとう! おじいちゃんね、すごい喜んでたんだ。 今度顔見せてあげて。絶対喜ぶから。ね!」 「うん。」 クラス中が驚いたように二人の会話を見つめる。 「野ブタ。に、友達が出来た。 俺は今、訳もなく思っている。 負けたくない。 人の幸せを、素直に喜べねーやつにだけは、 俺は、絶対に、負けたくない。」 商店街を並んで歩く信子とかすみ。 「知らない?じゃあ、今度連れていってあげるね!」 かすみの言葉に頷く信子。 「小谷さんって、もんじゃ好き?」 「うん。・・・好き。」 二人の背後でカラスが鳴き声を上げ飛んでいった。- 配套讲稿:
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